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工場再建の達人に訊く 5年後に「生き残る工場」と「消える工場」(前編) 土居自動車工業株式会社 今井勝雄会長インタビュー

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今回は、整備業界の凄腕コンサルタントのお話をご紹介。整備工場再建の達人、今井勝雄さんをご存知の方も多いのではないでしょうか。


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ほんの数年で、日本の総整備売上は2兆円のマイナスに?

今年1月に発表された令和2年度の『自動車特定整備業実態調査』によると、総整備売上高は5兆6561億円。前年比プラスという結果で、微増ながら増加は4年連続となりました。自動車の保有台数も伸び続けており、事情に詳しくない人がこの数字だけを客観的に見た場合、『整備業界の未来は明るい』と思うはずです。

しかし現実は真逆で、多くの整備工場は将来について悲観的な見方を持っているに違いありません。理由は、『クルマのIT化・電動化進展で整備需要の減少が見込まれる』『事業承継したいが、後継者が見つからない』『少子高齢化の影響で整備士が採用できない』などなど、多くの課題が発生しているためです。課題が山積しているだけに、『売上拡大』と言われても素直に受け入れられない人が多いのではないでしょうか。

実際に、国内にある9万社超の整備工場のうち8~9割は実質赤字と見込まれています。経営者の高齢化と経営者候補の不在、業界が将来直面するであろう大変革などを考えると、いずれ経営を維持できなくなる整備工場が続出する懸念があり、今後は、変化に対応できた整備業者だけが厳しい生存競争を勝ち抜くことができる時代がやって来ます。

では、生き残るのはどのような整備工場なのでしょうか。兵庫県神戸市の土居自動車工業を訪ね、今井勝雄会長に話を聞いてみました。

 

土居自動車工業株式会社
今井勝雄会長

土居自動車ウェブサイト

 

 

 

今井会長は数々の整備工場の経営再建を成功させてきた、業界では名を知られた人物です。その経歴を紐解いてみると、もともと日産のディーラーで整備士として働いていた今井会長は25歳のときに独立し、千葉県八街市に自ら整備工場を立ち上げました。天性の経営センスに恵まれていた今井会長は、その工場を県内随一の車検台数を誇る工場(社名を変更して今も現存)へと成長させます。

その後、ヘッドハンティングにより『ホリデー車検』で知られる(株)ホリデーに移籍し、整備工場の代表およびフランチャイズ部門の責任者を任されます。それから現みずほオートリース(株)のサービス部長を務めた後、2008年に再びヘッドハンティングで現在の土居自動車工業の社長に就任。赤字が続いていた同社の立て直しを要請され、黒字化への転換を成功させました。現在も複数の整備工場の社長を兼任し、その辣腕を振るっています。

その今井会長に業界の展望を聞いてみたところ、やはり厳しい予測が口を衝いて出てきました。

「安全運転支援システムなどの普及促進で『衝突しないクルマ』が増えることにより、少なくとも板金塗装や事故修理の分野の総売上は、3~5年という時間軸で半減する可能性が高いと踏んでいます。ほかでは、中長期的には電気自動車の増加でエンジン整備費用の急減も予想されますし、また最近のブレーキがほぼ壊れなくなっていることなどを考えると、現在5兆6000億円ある総整備売上高はあっという間に1~2兆円のマイナスになってもおかしくありません。3兆円台に落ち込む可能性すらあります。そうなったときに何が起きるかというと、整備工場の淘汰ラッシュです。生き残る工場とそうでない工場で明暗がくっきり分かれることになるでしょう」

危ないのは、いま「赤字」の工場

コンサルタントとして多くの整備工場の相談に乗ってきた経験を持つ今井会長は、経営者からよく『どういう会社が生き残ることができるのですか?』と質問を受けるそうです。個々の整備工場が置かれた状況は千差万別なため『これが正解』という絶対解はないものの、今井会長は「確実に言えることがひとつだけあります」と言います。

「整備業界を取り巻く経営環境は、年を経るごとに厳しくなっていきます。それを踏まえると、現時点で『黒字』の会社しか生き残ることはできず、『赤字』の会社はほぼ確実に消滅することが予想されます。大事なことは、5年後に比べればまだ経営環境が良いと言える今この時に、黒字化を目指すこと。リストラするにしろ事業の柱を増やすにしろ、とにかく利益を出す体質に会社を変えることです。待っているだけでは状況は悪化するばかりですから、将来のために『いま何をすべきか』を真剣に考える必要があります」

たとえ社員数人の小さな工場であっても、経営者は数年後を見据えて戦略を立案したり方針を決めたりしなければなりません。未来を見通すことは簡単ではないものの、だからこそ未来を読み解く努力を重ね、それに応じて自社を変えていく必要があります。

前述したように、土居自動車も数年前まで赤字が続いていました。請われて代表に就任した今井会長は改革を断行し、黒字化を達成しています。今井会長はいったい何をしたのでしょうか。その手法について、後編でリポートします。

(掲載日)2021年4月16日

 

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