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【整備業界情報】「トータルエイミング」で、特定整備時代を乗り切る(前編)

整備業界情報 自動車産業動向

2020年9月、ナルネットコミュニケーションズと日本の自動車整備機器メーカー最大手である株式会社バンザイは共同で、『特定整備制度と“トータルエイミング”』と題したセミナーを開催しました。数回にわたって当日の模様をレポートします。


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整備工場に押し寄せる「先進安全装備対応」の波

新型コロナウィルスの感染拡大で世界中が大混乱に陥っていた今年4月、自動車整備に関する新制度、いわゆる『特定整備制度』が日本でスタートしました。コロナ禍の影響で新制度に対応するための事前セミナー等が中止となり、知識や情報が不十分なまま特定整備の施行を迎えてしまった整備事業者も少なくないのではないでしょうか?

セミナーの講師を務めたのは、(株)バンザイ 営業情報企画部 営業推進一課 参事の福田守利さん(上写真)。福田さんは冒頭、『特定整備制度』の施行について「自動車を整備する際に新たな免許が必要になったことを意味しています。整備事業者には、適切かつ早急な対応が求められます」と説明した後、講義をスタートさせました。

そもそもなぜ『特定整備』制度が施行されたかと言えば、ペダル踏み間違い加速抑制システムや衝突被害軽減ブレーキ装置などの電子制御装置の搭載で『衝突しないクルマ』をうたう先進安全自動車(ASV)が増加の一途をたどっており、今後もいっそうの普及が進むと考えられたためです。

新制度は、衝突被害軽減ブレーキなどに使用される前方監視用のカメラやミリ波レーダーなどの調整、整備に強く関係する制度です。

たとえば、カメラやレーダーなどのセンサー類が備わるフロントガラスを交換・分解した場合、修理時にセンサー類の取り付け位置が変わってしまう可能性があるため、修理後に正常に作動するどうかの確認が必須となりました。

昨年まで、こうした先進安全機能の整備は、法律上は従来の『分解整備』に該当しないことから、誰でも整備や修理ができることになっていました。これは、考えてみれば大きな問題だったと言えます。そこで特定整備制度では、これらの整備が『電子制御装置整備』と位置づけられ、整備に必要な事業場や人員、整備用スキャンツールなどの要件が新たに定められたのです。

「クルマの進化に伴い、従来の『分解整備』が定めていた範囲では安全性を担保できなくなったため、新たに『電子制御装置整備』が加えられました」

「新制度では、分解整備の範囲が『取り外しを伴わなくても装置の作動に影響を及ぼす整備又は改造等』に変更されるとともに、自動運転レベル3以上の自動運転車に搭載された『自動運行装置』の項目を追加することで、その名称が特定整備に改められました」と福田さん。

周知のように、従来の分解整備の対象は原動機をはじめとする計7項目でしたが、特定整備施行後は、8番目の項目として電子制御装置が追加されました。

電子制御装置整備は、先進安全自動車に搭載されている
①自動運行装置(例:単眼・複眼カメラ)
②衝突被害軽減制御装置(例:ミリ波レーダー)
③自動命令形操舵装置(例:赤外線レーダー)
などの装置を整備、改造、調整する作業のことを言います。これら装置の脱着や交換、調整する作業は新たに定められた電子制御装置整備に該当するため、すべて『特定整備』の対象となります。


これからの自動車整備に不可欠な「エイミング」

「先進安全技術に使用される電子制御装置を正しく作動させるために、カメラやレーダーを正しい位置に調整し直し、設定する作業を『エイミング』と言います」(福田さん)

専門的な知識やスキルを持った人によりエイミングを正確に実施していない車両では、センサーの誤認識・誤作動による事故を誘発する恐れがあります。この場合、作業後の保安基準の適合性が担保できなくなってしまいます。

「特定整備では、衝突被害軽減ブレーキなどのカメラやレーダーが付いたフロントガラスの交換作業を実施する際にも国の許可、すなわち自動車特定整備事業の認証が必要となります」(福田さん)

昨今、AIやロボットの登場により社会のあらゆる分野で自動化が進んでいますが、このようにクルマの電子化・高度化に伴って、自動車整備の世界にも変化の波が押し寄せ始めているのです。

次回以降、認証の取得方法のほか、2024年の開始が予定され、自動車検査手法を大きく変える『OBD車検』の概要、今後の指定工場の在り方などについてレポートしていきます。

※特定整備の各種要件などの詳細は、国交省ホームページに掲載されている「特定整備制度概要」でご確認ください。詳細はこちらから

(掲載日)2021年1月26日

 

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